玄関前に集まる雪

 冬のある日、ある家の前を通りかかったときびっくりしました。

道路に向かって玄関がありましたが、その玄関の両側に大量の屋根雪が落下し、地上から1階軒先まで連なり、玄関への通路巾が50cmくらいしかありませんでした。

2階の半分の屋根雪が玄関の両脇に落下したみたいで、雪が自然落下する急勾配の立平葺き( たてひらぶき)の屋根でした。

どうしてこうなったのでしょうか。

敷地、道路、方位との関係を考慮しながら家の計画を進めます。

当初に屋根雪の処理方法(屋根雪を自然落下、屋根を雪置き場)を決めます。

どちらの場合も、大雪のときは屋根雪を雪おろしし、地上に落とした雪を排雪する必要があるので、敷地内にそのルートを確保します。

雪国で良い家の条件の1つは、降った雪に対して何もしなくて冬を過ごせることですが、なかなかそううまくいきません。

少雪の冬は問題が発生しないが、大雪の冬は屋根の形状にかかわらず除排雪処理の問題が発生します。

雪国では毎日雪が降って、屋根からの落雪、道路から玄関までの通路、道路の除雪で両側に寄せられた重い雪など、毎日除排雪しなければならない時期があります。

これらはすべて人力による力仕事なので、少なければ少ない方が良いのです。

屋根雪の処理をしなくても済むなら大助かりなので、雪国の家ではなるべくそのような家になるよう計画します。

勾配屋根の場合、平均して地上に落雪したり、雪おろしできるようにします。

落雪が平均すれば除雪しなくて済む日も多く楽ですが、落雪が集中すると毎日除雪しなければならず、余計な力仕事です。

1階と2階の屋根の方向を同じにすれば落雪量は平均化しますが、90°変えると2階の屋根雪が1階の屋根から地上に落雪したとき、1ヶ所に集中してしまうのです。

これらのことを考えずに平面計画し、最も経済的な屋根形状にすると、玄関前に落雪するような家になってしまうのです。

雪の降らない一般地域の家を計画するときは雪がないから、それほど考えなくても良い家ができます。

雪国の家を計画するときは雪があるから、その分だけ多く考えて計画し、工事しないと良い家になりません。



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