「家を販売する。」と言う
■住宅を販売するという言葉が、イマイチ、ピンと来ないでいます。
そう言えば、金融や保険も、そのような表現をしてますね。
物を売り買いするときの売買契約書で契約するから、
「建売り住宅を販売する。」のは、理解できます。
「中古住宅を販売する。」のも、理解できます。
一方、新築住宅は請負契約書で契約します。
自分で家を建てるべきところを、会社に建ててもらう契約です。
金融や保険も、売買契約書で契約しないのに販売すると言いますね。
以前のように、「保険契約をしませんか?」と言われると、面倒な感じだが、「保
険を買いませんか?」と言われると、何となく簡単な感じです。
「家を建てませんか?」と言われると、面倒な感じだが、「家を買いませんか?」と
言われると、何となく家電品と同じように、簡単に家が買えそうな気がします。
■料理番組で、「時間をかけてつくるおいしいメニュー」でなく、「短時間で、簡
単につくれるメニュー」が流行って来たと同じように、家づくりも「短時間で、簡
単につくる家」が流行って来ました。
初めから考えるよりも、あらかじめ用意されている各ハウスメーカーの数種類のプ
ラン集から自分に合っているものを探し出し、少し変更してプランを決める「簡単、
お手軽家づくり」を好む人が多くなったせいでしょうか。
■金融、保険商品は、物品の売買と同じように、買った(契約した)瞬間に発効しま
すが、家を買った(契約した)とき、まだ家が建っていないので、契約はしたけど、
契約が完了するのは数ヶ月後、という大きな違いがあります。
「買っ・・・・・・・・(数ヶ月経過)・・・・・・・た。」
この長ーい契約期間がある売買は、その間にいろいろな問題が発生するおそれがあ
るので、十分気をつけましょう。
■あるとき、電話がかかってきました。
「十三湖の、時計台みたいな公衆トイレを設計した事務所ですか?」
以前、町からの発注で、設計監理した公衆トイレのことでした。
「はい、そうです。」
「こちらは・・・ですが、あれ、良いと思い、同じものを別の所に建てたいので、
町に聞いたら、設計事務所の了解を取れば、設計図を貸しても良いと言われました。
如何でしょうか?」
突然のことだったし、そういうの初めてだったので、あわてました。
設計の著作権は事務所にあるので、設計料の一部を払ってもらえるのかな、と思っ
たが、相手にその気はなさそうでした。
気に入って、そのまま建てるというので、嬉しくなって・・・まー、良いかと思い、
「はい、お使いいただいて結構です。」と、答えた。
それまでは、1設計に1建設だったのに、そのとき初めて、1設計で2棟建てるこ
とを知りました。
■ハウスメーカーは1棟の設計図を「檜の家」と名付け、数百、数千棟を建てます。
現場は今まで通り1棟ずつ建てる感覚ですが、役員や営業マンは、家電品を大量生
産・販売するのと同じ感覚で、「販売する」と言うのでしょう。
大量生産なので、変更を好まないし、そうすると、オプション工事が発生します。
「窓を増やしたい、間取りを変えたい、と言ったら・・・、構造的に無理だと、言
われて・・・、結局、思い通りの家にならなかった。」
「変更してくれたけど、オプションだと言われて、追加工事費を払った。」
■建主さんは家づくりの知識がないので、深い意味で質問することはなく、営業マ
ンの回答能力をチェックする程度です。
質問するものの、その回答が本当か、ウソか、判断できずに鵜呑みにし、自分の
思い通りの回答をしてくれた営業マンを気に入ります。
それくらいならマニュアルに沿って簡単に回答できるので、建築を知らない文系の
営業マンの方が契約に誘導するのに適役です。
なまじ、設計者がていねいに専門用語を連発して回答すると、建主さんが理解でき
ず、不評を買ったり、設計変更の要望が出たりするので、かえって、プロでないも
の同士の方が、サロン的に建築の楽しい話がはずみ、スムーズに契約話が進むので
しょう。
話の途中で、何度も・・・、
「お客様のおっしゃる通りです。プロ(?)の私が知らなかったことを良くご存知で
いらっしゃいます。おかげさまで、私も良い勉強をさせていただきました。ありが
とうございます!」
なーんて、言われれば・・・、
「アラ! なんて礼儀正しい人かしら・・・、信頼できそうだから、ここに決めた!」
と言うことで、めでたく一件落着!
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