介護が前提の二世代住宅
敷地の手前と奥に自宅と親宅が「スープの冷めない距離」よりも近く、生計が別で何の支障もなかったが、二棟をつなぐ渡り廊下をつくりました。
元気だった親が日常生活で困難になるのは予想しませんでした。
雨、雪、夜にかかわらず親宅に行かねばならなくなり、別棟は不便で、渡り廊下で行き来できるようにしたのです。
親の反対で渡り廊下をつくらなかったが、もう反対しませんでした。
介護を受ける方には不要だが、介護に行く方には必要です。
介護施設があっても、自宅に住みたくて入所を好まない親の気持から、高齢介護を前提とした二世代住宅が不可欠です。
二世代住宅を新築したご両親の話です。
「住んでみていかがですか。」
「元気だから二人だけの家で良いと思っていたが、息子家族が二世代住宅にしようと言うので、乗り気でなかったが賛成した。しかし、そうして本当に良かったと実感しています。」
「どうしてですか。」
「住んでみて初めて分かったが、孫が共用ドアから毎日入ってくるのが嬉し
いし、ドアの向こうに息子家族がいると思うだけで気持が落ち着きます。元気が出てきて、長生きしたくなりました。」
しかし「孫と一緒に暮らせる楽しい二世代住宅」から、年数の経過と共に「高齢介護の二世代住宅」に変わります。
単にバリアフリーにすれば良いだけでなく、高齢介護を前提とした家づくりが必要です。
設計の打合せでこんな状況が生じます。
設「ここはこのようにした方が良いと思いますが、如何ですか ?」
子「どうしてその方が良いのですか ?」
設「将来、ご両親の介護が必要になったときのことを考えるからです。」
子「私はO.Kです。しかし、そういうことは私から親には言えないから、親
に話してO.Kをとってください。」
設 「ここはこのようにした方が良いと思いますが、如何ですか ?」
親 「どうしてその方が良いのですか ?」
設 「ム・・・・・」
その理由を答えたいけど、それを聞くと、今は元気なご両親は良い気持ではないでしょう。
しかし、私がその理由を言わざるを得ませんでした。
介護を考えるとトイレは寝室内にあるのが良いが、元気な今はそうしたくないでしょう。
親世帯の生活スペースは全て1階にするにしても、現在の元気な生活に合わせた家にするか、将来の介護生活に合わせた家にするかで、プランも部屋のつくり方も変わります。
二世代住宅は平面区画が良いが、敷地の都合で2階建ての上下区画になることが多いです。
1階は親で、2階が子家族では、1、2階間を断熱材・遮音シートで遮音し、寝室どうしが上下にならないなどの配慮が必要です。
親の生活スペースは親が決め、子家族の生活スペースは子家族が決めるようにし、共有部分で考えの相違があったとき、いずれ可愛い子家族の家になるので、親が我慢して譲ると、その後の親子関係もうまくいきます。
二世代住宅では全く別世帯の家にするなら、2戸分の大きい家になりますが、共有できる部分があれば床面積を減らせます。
1 玄関を共有する。
2 居間、食堂、台所を共有する。
3 脱衣・洗濯・浴室を共有する。
各部屋が広めになり、別の小台所、寝室を広げた小居間など、別に生活できるスぺースもプラスしますが、2戸より少ない床面積になります。
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