人の寿命と家の寿命との意外な関係
■ 医療は格段の進歩を遂げています。
癌を代表とする死に至る病気も早期発見なら完治すると言われ、近い将来ますます克
服されていきます。
その結果死ににくくなり、国民皆長寿になります。
T:建主さん(あなた)
S:専業設計事務所・・・設計・監理(施工はK)
K:工務店さん・・・設計・施工
H:ハウスメーカーさん・・・設計・施工
C:家づくり仲介業さん・・・T、S、K・Hの仲介
(上の凡例を以下の記事中、敬称を略して使用)
それは喜ぶべきことですが、現実的には良いことばかりではなく、各自がそれに対処
しなければなりません。
生きている限り食事し、排泄し、睡眠しますが、そのためにそうする場としての家が
必要です。
その家は一戸建ての住宅や二世代住宅、マンションのような集合住宅、短期的な病院
や長期的な介護施設があり、所有形態として自己所有、賃貸、入所などがあります
が、ここでは自己所有の一戸建ての住宅と二世代住宅について考えます。
■ 定年退職してから家を新築する人が多くなりました。
以前は定年退職したとき「どうせ、70才くらいで死ぬだろう。
今の家でもそれまでは大丈夫だ。」と考えました。
ところが寿命が90才まで延びた今、定年後30年も生きることになり、そう簡単にい
かなくなりました。
それは働いていた30年とほぼ同じです。
家の寿命は60年(一世代30年×2)くらいなので、30代に家を建てれば90才までな
ので・・・ちょうど良い !!
ところが、実際にこれから先30年住むと考えると、そう簡単ではありません。
1 子供を育ててきた家は広すぎ、使わない部屋もあり、夫婦二人住まいに適してい
ない。
2 子供家族と同居するには狭いし、そのような生活ができる家になっていない。
3 30年経過しているので、家のあちこちに不具合が生じているし、つくりが悪い
家なのでこれから30年も住めそうにない。
4 30年も住んでいる今の家に飽きたし、古くなったので健康で楽しい余生を過ご
せそうにない。
■と、言うことで、
1 夫婦二人住まいの家になるよう今の家をリフォームする。
2 夫婦二人住まいの家を新築する
3 子供家族との二世代住宅になるよう、今の家を増・改築する。
4 子供家族との二世代住宅を新築する。
のパターンになります。
■1と2のどちらを選ぶかで、迷う人が多いですが、正解は簡単です。
1 新築できるお金があるなら、新築する。
2 新築できるお金がないなら、改築する。
3 60年経過していたら、新築する。
3と4のどちらを選ぶかで、迷う人が多いですが、正解は簡単です。
1 新築できるお金があるなら、新築する。
2 新築できるお金がないなら、増・改築する。
3 60年経過していたら、新築する。
■新築を勧める理由は、
1 新築したときから、新しい家で健康で豊かな生活ができる。
2 家の仕様、技術が30年前より格段に進歩している。
3 介護も考慮した生活に適したバリアフリーの家を建てることができる。
4 今新築すれば60年大丈夫なので、次世代を援助することになる。
5 古い家にかける増・改築費が、無価値になる危険を回避できる。
6 しっかり新築しておけば、いつでも損しないで売却できる。
■二世代住宅の設計のときの話です。
T「現在、両親が住んでいる敷地に、二世代住宅を新築したい。ただ、今のところ両親が必ずしも新築することに同意していないし、結果的にリフォームになるかも知れないが、設計を始めるのに良いですか?」
S「ご両親と同居するのは良いお話ですし、新築でも、リフォームでも良いので始め
させてください。」
T「両親とは仲が悪いわけではないが、自分たちからは、なかなか話しずらいことも
あるので、布川さんから話をしていただけませんか?」
S「分かりました。リフォームの可能性もあるなら、今の住宅の調査も必要なので、一度、私だけでご両親宅に行きたいと思います。そのとき、いろいろお話をしてきます。」
ということで、設計が始まりました。
その後、設計図を何度か提出してお話をしていくうちに、ご両親も、
「こういう家なら、是非住んでみたい。子供と、それに孫とも一緒に住めるなんて、
考えても見なかった。本当に嬉しい話です。」
設計がかなり進んでから建主さんとご両親と一緒に打合せしましたが、それまでは
別々に打合せしていました。
このように、二世代住宅のときは親子の間でも話ずらいこともあるので、設計者が
間に入って計画を進めるのも良い方法です。
もちろん、二世代住宅を新築しました。
■人と家の寿命が同じ60年だったのに、人の寿命だけ90年になり、今までと同じ考
えではいかなくなりました。
家づくりのお金は多額なので、早めに対処しましょう。