雪国の屋根に朗報

■ 屋根材はその地域によっていろいろなものが使用されていますが、
カラー鋼鈑葺きの屋根のことです。

雪国では毎年忘れることなく冬になると雪が降ります。

雪はその地域によって降り方や、性質も異なります。

強い風による横なぐりの雪であったり、風もなくしんしんと降り積もったり、

雪がサラサラの軽い粉雪であったり、水分を含んだ重い雪であったりいろいろです。

降った雪は屋根、庭、道路に積もりますが、
屋根に積もる雪にどう対処するか
大きな課題です。



■ 敷地が広ければ屋根雪がどこにどう落ちようが問題ありませんが、

60坪くらいの土地に40坪の2階建ての家を建てるときはそうはいきません。

敷地のまん中に建てても、どちらかに寄せて建てても、不都合なことがおきます。


最初に敷地と家の大きさのバランスから屋根雪の処理方法を決めます。

屋根雪を落とすなら急勾配の屋根にするし、屋根を雪置き場と考えて屋根に
乗せておくのであれば緩勾配の屋根にして雪止めを設けます。

家の格好が良い急勾配の屋根は落雪する場所を広く取るので、

敷地に余裕がなければできません。

緩勾配の屋根に雪を乗せておくと軒先に危険な
「つらら」が発生します。



■ これらを解決する救世主として十数年前から屋根の
「無落雪工法」が始まり、
現在全盛です。

これは勾配屋根が「へ」の字形なのに対して、その逆の
V字形です。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造の一般ビルではこの形ですが、

それをカラー鋼板葺きで可能にしたところが優れています。


しかし、家の屋根は
「勾配屋根(片流れ、切妻、寄棟、入母屋など)」
イメージしたいが、無落雪工法は一般ビルと同じように屋根が水平になります。

袴をつけるなどして工夫してもそのデザインから抜け出ることができません。

雪を処理するには最適な工法なのでその実用性を重視した結果、

デザイン的にはイマイチの感がある無落雪の家がたくさんできました。

建主さんから「雪おろしをしなくて済む家にして欲しい。」と要望されると、

無落雪工法を採用せざるを得ないので、毎回悩むところです。


ところが、数年前からまたまた救世主が現われました。


どなたが考案されたのか知りませんが、ホトホト感心しました。




■ 最も普及している立平葺きの長尺カラー鋼板の継ぎ目方向が勾配に

平行なのに対し、それを直角方向にして葺いたのです。

その継ぎ目の巻き込み高さを少し高くし、
直角方向より少し傾斜させたのです。


この屋根を「横立平葺き」と仮に呼びましょう。

こうすることでどのような良いことがあるのでしょうか?

1 雪止めを屋根全面に約40センチピッチに連続して取り付けた状態になるので、
雪がずり落ちません。

2 暖房熱や太陽熱で融けた屋根の融雪水が少し傾斜させた継ぎ目に沿って流れ、

軒先に向かって融雪水が流れないので、危険なつららが発生しません。
できても、つららが雪のずり落ちと一緒に
大きな雪背(せっぴ)になりません。

3 屋根雪が過大になったとき雪下ろししますが、その際に約40センチピッチの

3センチ高さの継ぎ目部分は、人が屋根から滑り落ちない安全な足掛かりになります。



■ 
雪国の屋根に軒樋がありせん。

軒先のつららや、ずり落ちる屋根雪の重さに耐えられる既製品の軒樋がありません。

軒樋をつけると初冬に軒樋を取り付け、春先に取り外して・・・

という具合に毎年この作業をしなければなりません。

1階でも、2階の軒樋はなおさらのこと、取り付け、取り外しの費用がかかるので、
数年もすれば春先に取り外してそれきりになってしまいます。


丈夫な金属製の軒樋にすると、その重さに耐えるように軒と軒先の構造を

強くしなければならないし、これも数年すれば壊れてしまいます。

軒樋がなくて困るのは、2階の屋根から約3メートル下の1階の屋根に落ちる

融雪水が昼夜かまわずポタポタと聞こえることです。


それゆえ、軒樋をつけなくても済むような屋根の設計をしています。

たとえば、
総2階建てにしたり、1つの大屋根でカバーするなど、
なるべくシンプルな屋根の形にします。


横立平葺きの屋根は軒樋と同じ効果があり、竪樋だけあれば、雨も雪もOKです。

この屋根の実用的な長所を述べましたが、

実は本当にスグレモノとしての真価はほかにあります。


それは
雪国に勾配屋根の復活をもたらしたことで、
狭い敷地でも雪を意識せずに計画できるようなったのです。

45°くらいの勾配まで雪が止まるので、隣地側にあまり空地を確保しなくても

勾配屋根が可能です。

この屋根にすると、
ごく普通の考え方で家をデザインできます。