私、何も知らないんです
プランを決めたときの、建主さん(T)と私(設計S)の打合せです
T「ちょうど良かった! 工事費のことを聞きたかったのです。」
S「坪当り○○万で、約50坪ですから、掛算して、消費税8%を加算すると○,○○○万くらいです。それに、設計監理料が工事費の◯%としますと、◯◯◯万になります。」
T「うーん! ちょっと、オーバーかな? どうしたら良いかしら?」
T「それで、いつ頃、工事費を払うんですか?」
S「完了予定が10月末なので工期4ヶ月を逆算すると、6月末ころに契約額の30%で、8月の中間検査後に30%で、引渡しの10月末に、残額の40%です。設計監理料は、設計完了時に70%で、引渡し時に30%です。」
T「一度に払わなくても良いんですか!・・・ 少し、気が楽になったわ!」
T「で、そのとき、両方のお金を、布川さんに現金で払えば良いのですか?」
S「ハッー??? 私に全部ですか?」
T「そうじゃないんですか?」
S「いえ、違いますよー! 銀行振込で、工事費を工務店に払って、設計料だけ私に払っていただきます。」
T「そうなんですか!」
びっくりしたな、モー!!!
家づくりについて全く知らないで設計事務所に来る建主さんもいます。
S「この後、見積りしてもらいますが、今住んでいる家は知り合いの大工さんが建てたとお聞きしましたが、今回もそこから見積りを取りますか?」
T「いいえ、今回はそうしません。 どうすれば良いですか?」
S「他に、知っている工務店がいますか?」
T「いいえ、知らないから、どうすれば良いですか?」
S「競争見積りしたいなら、地元の工務店の中から5社くらい指名し、見積りしてもらうのが良いと思います。」
T「これから、壁紙など、いろいろ決めることがあると思いますが、私は何も知りません。それでも、大丈夫ですか?」
S「その時々に、私がアドバイスしますし、決めていく方法もお知らせします。壁紙など、私が原案をつくってから、決めていただく方法もあるので,大丈夫です。」
T「それに何も分からないから、進め方も分かりませんが。」
S「全て、私の方から声をかけます。それに対応していただければ良いのです。あのとき決めなかったから遅れたとか、そうしなかったからこうなってしまった、などと言いませんからご安心ください。」
T「アッ! やっと今わかりました!」
S「何がですか?」
T「布川さんの本を読んだときも、前回説明されたときも、自分で分かったつもりだったのですが、今の説明ではっきり分かりました。」
確かにそういうことがあるかも知れません。
打合せのとき、Tさんが理解していないと思えるときがあります。
そのときは戻って説明しますが、それに気づかないときもあります。
そういうときは、どうしょうもないですが、何度も打合せしていくと、建主さんが専門的な話を理解してくれるようになるんですね。
そうなると、その後の打合せもスムーズに進みます。
T「私って、何もわからないのに、ここに来たんですよ。」
建主さんとは、仕事上いつも(数ヶ月間の)一期一会の関係です。
設計の最初はいつも初対面です。
打合せを重ねるうちに、気心が知れてきます。
基本設計が終る頃に、お互いに冗談を言えるようになります。
工事が完了して家の引渡しが終ると、次の仕事でお会いすることはないでしょうし、あってもは30年後でしょうか。
設計委託するのだから、設計についてある程度知っている、と思ってしまいますが、意外に何も知らない人が多いですね。
私が設計したAさんの家を見て、来てくれた建主さんです。
たぶん、Aさんが「何も知らなくても大丈夫だから、とにかく行ってみると良いですよ。私たちも何も知らないで、スタートしたのだから・・・。」
とでも、言ってくれたのでしょう。
最初と2回目の打合せまでご主人も一緒でしたが、3回目のとき、
T「これからは、打合せに来るのは私だけです。」
ご主人の面接試験が合格したようで、ホッとしました。
家の設計は、初めはご主人も加わりますが、自分の要望が設計図に反映されたのを確認すると、後は奥さんに任せて抜けて行くことが多いです。
家は奥さんが住む主流になるので、その方法が正解のように思います。
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